えすおーの・・・weblog

※毎日更新は無理・・・

2018年台本新作第2弾「Present」


登場人物

 

轟木 隆 父親

轟木 凛子A(2018年の隆の娘)

轟木 凛子B(2038年の隆の娘)



暗転

 

 雑踏

 人混みのノイズ・・・

 暗闇の中、遠くの方から、山下達郎の「クリスマス・イブ」が聞こえる。



隆「たーだいまー」

 明転

 仕事帰りの隆。

 舞台上手から、のっそり、隆、in

 凜子A、隆を見つめながら舞台下手から無言で、in

 

 酔いがひどい隆

 何杯くらい呑んだのであろうか。 

 一つ一つに声を出しながら凜子の視線に気づきもせず、そこら中に服を脱ぎ散らかす

 

 そして、

隆「よいっしょっと・・・」

 どっかりと座り。

 凜子は、喋ることもなく、

 隆が脱ぎ散らかした服を、片っ端から拾い、

 丁寧に畳み、近くに置く。

 隆は、それも気づきもせず、

 いや、気づいてるけどもそれに気を使うことはせず

 そばにあった新聞を読み始める

 隆の服をたたみ終わった凜子もその対面に座る

 

 二人、しばし沈黙

 

隆「ないぞお・・・」

凜子「(声に気づき、隆を向く)」

隆「うん、ないから・・・」

凜子「・・・」

隆「(山下達郎のクリスマスイブの)♬雨は夜更け過ーぎに〜」

凜子「・・・」

隆「♬雪へと変わるーだろ〜、サイレンナーイ、ホーリーナーイ」

凜子「・・・」

 隆、ここで、ゴロンと寝そべり

隆「今夜がイブだってことは、お前がなーんも言わなくてもー、俺はーしーっかりわかってーいるー」

凜子「・・・」

隆「去年を思い出せ、去年。あー、来年、凜子も中学生かーってー・・・でー、今年なわけだ よ」

凜子「・・・」

隆「凜子ー、中学生ってなんだ?」

凜子「?」

隆「なあ、中学生ってもんはさ、世間からすりゃ、ある意味、大人の仲間入りってことだ   とー、俺は思うん だよなあ」

凜子「大人じゃない・・・」

隆「(食い気味に)大人だー」

凜子「違う」

隆「大人ー。中学生は大人なんだ。」

凜子「・・・」

隆「大人になれば・・・こんな日にサンタはいないってことにー気づいてるはずだ」

凜子「!」

隆「昔からプレゼントをくれていたのは俺!」

凜子「・・・」

隆「俺ということを、頭のいい凜子なら、わかってたんだろう?」

凜子「・・・」

隆「それがわかる、ってことが、大人の証拠だ」

凜子「・・・」

 

 隆、ごろんと寝そべり

隆「♬雨は夜更け過ぎに〜・・・(大あくび)・・・雪へと変わるーだーろ〜」

 舞台、徐々に暗くなる、フェードアウト

 (凜子A、ここでハケる)

 

 暗闇の中、

隆「♬サイレンナーイ、(眠りにつきながら)ホーリーナーイ、

 きっと君は来ーなーい」

 

 その時

凜子B「来ちゃった!」

 (暗転中に凜子B、in)

 

 明転

 

 寝てる隆のそばに、ひとりの女性が座って、隆を見下ろしている

隆「?????」

凜子「はい、来ちゃいましたねー」

隆「????・・・♬ひとりきりのクリスマスイーブ」

凜子「(食い気味に)ひとりじゃなーい」

 隆、飛び起きる

隆「誰あんた!?」

凜子「誰でしょう?」

隆「疑問を疑問で返すな!」

凜子「わかんない?お父さん」

隆「お・・・お?」

凜子「お父さん」

隆「お・・・おと、お父さん?」

隆「ゆ、夢か」

凜子「思いっきりリアル」

隆「いやいや、凜子はうちの娘だ!今度中学生なんだ!さっきまでここにいたんだ!」

凜子「いたみたいだね」

隆「だったらお前誰なんだ」

凜子「凜子」

隆「そんなわけない!でてけ!」

凜子「出ていかない」

隆「なんでー!?」

凜子「お父さんが、中学生の私にプレゼントを渡すまで帰らない」

隆「え!」

凜子「今日この日、プレゼントをもらっていたことを記憶してる私だから」

隆「さっきからもうわからん!お、お前が凜子だっていう証拠は!」

凜子「YYYY年MM月DD日生まれ、血液型X型、AA小学校卒、BB中学校卒、CC高等学校」

隆「CC高校!!!」

凜子「中退」

隆「中退!????」

凜子「あ、ここまでにしておこう未来を言うのは。」

隆「おい!も、もともとお前は、この前の三者面談で、DD高校希望とか言ってたじゃない   か!」

凜子「自分のDNAに期待しすぎ!」

隆「!」

凜子「残念。」

隆「にしてもだ!中退って、中退は許さんぞ!未来の、お、俺はその時、許したのか!」

凜子「うん」

隆「うん???」

凜子「ま、結果、こうやってグレもせず、普通に生きてるんだからいいじゃない」

隆「・・・」

凜子「ちょうだいプレゼント」

隆「はあ!!!」

凜子「普通見れないんだよ?未来の娘を。こうやって見れてるだけでも幸せだと思いなさい  よ」

隆「いや、これが普通と思いたかない!」

凜子「さあ、今すぐ、Amazonかなんかで私へのプレゼントを頼もう」

隆「ふざけるな!」


凜子「あ、お父さんはAmazonプライム入ってなかったね。お金ケチって」

隆「うるさーーーーーい!」

 隆、飛び起きる

 隆、思いっきりほっぺたつねる

隆「いってええええええ」

凜子「残念。リアルガチ」

隆「嘘だ嘘だ嘘だ。夢だ夢だ夢だ。おい!お前、うちの凜子を返してくれよ」

凜子「私が未来の凜子なの!」

隆「!」

凜子「信じなくてもいい。でも・・・ここでプレゼントをもらわないと、今の私になってない の!歴史を変えないでくれる?!」

隆「お前がここに来てること自体は歴史を変えてるんじゃないのか!」

凜子「今の私がとっても幸せだから!幸せのためにもこうやって歴史を正す必要がある!」

隆「幸せ?なんだよ、教えてくれよ!」

凜子「言えない。」

隆「言えないじゃないか!」

凜子「タイムトラベルのルールなの!言えない。」

隆「・・・」

凜子「けど・・・とっても幸せ」

隆「・・・幸せ・・・なのか」

凜子「うん」

隆「・・・」 

 凜子B、立ち上がって傍にあった凜子Aが畳んだ、隆の服を、持ち上げる

凜子「あの歳で上から、お前は大人だなんて押し付けられたら反抗もしたくなるよ」

 凜子B、その服を舞台袖に持っていく

 そして戻る

凜子「センシティブな年頃なんだからさー、考えてよね。ガサツなんだから」

隆「しょうがないだろ、昔からこんな人なんだから」

凜子「まあね」

隆「まあねって・・・」

凜子「(笑)結局、お父さんは、お父さんだから」

隆「ちょっとはわかってるだろう?うちの家計のこともさ」

凜子「そこねー・・・」

隆「いいか?俺は、お前が覚えてるかわからんからなんども言うけども、中学生になったらプ レゼントは終わりにするぞって去年言ってるんだ」

凜子「うん」

隆「だろ?!」

凜子「家のこともわかってる。でも」

隆「・・・」

凜子「今日はクリスマスイブ」

隆「・・・」

凜子「ね」

隆「・・・俺がお前にプレゼントをあげることで・・・歴史は今のお前に繋がるんだよな?」

凜子「うん」

隆「じゃあ、逆に聞きたい。そちらの世界では、俺は、生きてるんか」

凜子「お父さん」

隆「なあ、生きてるかどうかだけ聞きたいんだよ。それだけ」

凜子「未来に関わることは言えない。ルールなの」

隆「教えてくれよ!そしたら買ってきてやる」

凜子「お父さんも大人でしょ!」

隆「・・・」

凜子「私を見て」

隆「・・・」

凜子「ねえ!見て!」

隆「・・・」

凜子「大丈夫」

隆「・・・大丈夫?・・」

凜子「大丈夫。」

隆「・・・」

凜子「それが・・・未来からの答え」

隆「・・・」

 隆、じっと凜子を見つめる。

 そして

 隆、おもむろにはける

 凜子、それを見つめる。

 

  暗転




暗転中、凜子A、元の場所にinし、板つき

 明転

 隆、着替えながらin

隆「行くぞ」

凜子「?」

隆「?・・・行くぞ!」

凜子「!」

隆「今年からは・・・お前と買いに行く」

凜子「え」

隆「お前の声が聞きたい」

凜子「・・・」

隆「一緒になって考えて、お前の目の前で渡したい」

凜子「・・・」

隆「ほら、着替えて」

凜子「でもこの時間、どこも開いてないよ」

隆「そうかな?」

凜子「そうだよ」

隆「わからんぞ?」

凜子「?」

隆「まだ終電じゃない。」

凜子「・・・」

隆「行けるとこまで行ってみよう。」

凜子「行けるとこって言ったって・・・」

隆「ま・・・最悪・・・イオンだな」

凜子「閉まってる!」

隆「文句言わない!」

 凜子、立ち上がり、隆を見つめる

隆「・・・なんだ?・・・」

凜子「・・・」

隆「?」

凜子「・・・しょうがないなあ。」

隆「しょうがないってなんだ、しょうがないって」

凜子「うるさい!サンタ!」

隆「(笑)ほら早く!」

 凜子、着替えるためにハケる 

 隆も凜子を見つめ、ハケ

凜子B、ゆっくり下手からin

 凜子A、着替えて下手からin

 凜子Bの前を凜子A気づかず小走りに通り過ぎ

 上手にハケ際、ふと立ち止まる

 凜子B、それを見つめている。

凜子B「若いな、私」

 凜子A、それが聞こえるわけないのだが

凜子A「(ありがとう私)・・・」

 凜子同士、見えないはずなのに、視線が合っているように見える。



 

 凜子Aハケ

 凜子B、Aが隆の元に向かったのを見届けて、ハケる。










END